昨年来、中国との外交関係が非常に大きな問題となっている。
高市総理は年末に、複数の歴代首相経験者を訪問したという。この問題をどう決着させるのか、がテーマになったものと推測される。春には渡米して、2度目のトランプ会談を行う予定だという。が、この問題の正答を、トランプ大統領から得ることはやはり難しいのではないだろうか。米国内では、大統領自身が日々、政治的課題を山積させている。韓国や台湾に対して米国が求めている「軍事費のGDP対比3.5%」と変わらない“ディール”が、その解答にならないか懸念する。
そもそも高市総理の口から出た「台湾の非常事態の定義」発言は、なぜ中国を怒らせ、硬化を招いているのだろう。1972年、当時のニクソン大統領が訪中し、中国政府との間で「上海コミュニケ」が交わされたことが、米中間の戦後の融和の始まりとなった。が、中華人民共和国を、台湾をふくむ唯一の中国(一つの中国の承認)とする中国側と、それを承認ではなく「認識」とした米国との間には微妙な温度差があったとされる。その上に築かれた協定文書だったことも踏まえておく必要がある。
米国は、このような“不安定の中の安定”を最大限に活用し、通商政策に重点を置いたアジア外交を行ってきたともいえる。レーガン、ブッシュと、米国の歴代大統領も、“不安定の中の安定”を最大限の糧として対中国外交を進めてきた。中国側は、資源確保に目標を置き攻撃的な外交姿勢をとることで東シナ海の緊張を高めてきたし、米国側もまた、故ペロシ民主党院内総務(当時)の台湾訪問や、台湾政府への武器の売却などを通して“不安定の中の安定”は、失われつつあるように見えた。
そうした中で誕生した日本の石破政権。日中外交の安定化が図られたものの、1年後、石破氏は総理を辞任した。「総理辞めるな」の異例のデモ行進もあった。辞任直前、石破前総理は敢えて「80年談話」を発表したが、その必然性もうかがわれる。
替わって高市政権のもと、「米中台関係無認識」の発言が飛び出した。直ちに中国側から強烈な反発があり、日中関係のベースはこの一言で見事にひっくり返された。さらに続きがある。予算審議中が続く中、自衛隊機と中国海軍のレーダ照射問題が持ち上がった。事前に中国軍と自衛隊機との交信が行われていたことを証明する動画を中国側が公開したことで、防衛省の見解はトーンダウンした。
一方、この問題は、航空自衛隊機の行動が、どの段階から指令されたのかという点も重要なポイントになる。事実関係によっては、我が国の「文民優位=シビリアン・コントロール」の問題にも関わってくることが予想される。通常国会で、これまでの事実関係を、ぜひとも明らかにしてもらいたい。
さらに言うなら、日中外交にとって「沈黙」は最大の敵である。話し合いをせずして外交は成り立たないし、通商交渉にとってもマイナスだ。戦後80年も経過すれば、大戦の記憶は自ずと遠ざかってしまうものかもしれないが、自衛隊や現政権が前のめりになればなるほど、あの盧溝橋事件の二の舞が再来する危険性も高まってくることを、我々は注視していかなければいけない。
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