教育時報社

TOP特定商取引法に基づく表記プライバシーポリシーお問合せ
 近畿の実力私学50選
開智中学校・高等学校

高松雅貴 校長先生へのインタビュー


「自分をもっと伸ばしたい」
生徒の思いを大切に

〔22.11.28号より全文掲載〕


―― 昨年、校長に就任されました。これまでの取組と今後の抱負など、おうかがいできればと思います。

高松: 開智中高は今年、開校30周年を迎えました。その前年に就任させていただいたことにも感慨深いものがありました。

 また開校30周年と同時に、今年は法人創立から数えてちょうど100年目にあたります。長年の歩みを振り返り、これからの開智を展望する上で、またとない機会を与えられものと受け止めています。

 本校は開校以来「国公立大学に100名」という目標を内外に表明し、カリキュラムや進路指導、教科指導、行事計画を含め、進学校としての最適化に取り組み、毎年百数十名が国公立大学に合格するようになりました。

 背景にはもちろん生徒たちの頑張りがあったわけですが、「生徒の頑張りに応えたい」「生徒一人ひとりを伸ばしたい」という意欲を教員間で共有できたことも大きかったと思います。


“make it better! ”を根幹に

 私学教育は、校訓を体現する人物の育成を本来の目標としています。

 本校は発足当初より具体的な進学目標の達成を目指してきましたが、その根幹のところに校訓がしっかりと位置づけられていたことに、今更ながら気づかされる思いがあります。

 私自身、新たな立場を与えられたことで、原点を再確認したいという思いを強く持つようになりました。

 本校の校訓は「四恩報答」です。例えば毎日の食事ひとつをとってみても、お米を作ってくれる人がいてそれを加工してくれる人がいて、物流があり調理してくれる人がいる…というように、何事も自分一人ではできないことに気づくでしょう。そして感謝の気持ちを持つのが「四恩」の部分です。

 さらにその感謝の気持ちに報いることが、実は重要なところです。行動に移すためには、今の自分の能力や、今出来ることについてもよく知らなければなりません。

 私自身、学園創立者の思いをたどる中で、「四恩報答」とは“自分が関わった事をよりよくすること”と自分なりに解釈し、“make it better! ”のキャッチフレーズを考えました。

 「もっとできるようになりたい」「自分をもっと伸ばしたい」という生徒たちの気持ちにしっかり寄り添いたいと思います。教職員や生徒の皆さんも、それぞれが自分なりの言葉や行動で「四恩報答」を表現してみてほしいと考えています。

 今の時代は、オンラインを通して他者と関わることもできるわけですが、実際に登校して授業を受け、行事やクラブ活動も体験する中から共感する力やコミュニケーション力が育っていくはずです。学校ならではの良さを、本校で体験してほしいと願っています。



自由なテーマでキャリア形成を後押し

―― 高校の探究学習“マイ・プロジェクト”について ――。

高松: 高1では主に探究の方法を学び、興味関心を育て、自分自身を知ることを目標にしています。高2からは自由なテーマで探究活動を展開し、学年の終わりに一旦プロジェクトを完成させます。

 また高3の4月には、各クラスから2名ずつの代表者を選出した上でコンテストを開催し、生徒による投票で優勝者を決定します。

 今春は「iPhoneとAndroidどちらが優れているか」のタイトルでプレゼンを行った生徒が優勝しました。楽しげなプレゼンの光景が印象に残っています。

 マイ・プロジェクトの個々の成果は、総合型選抜や学校推薦型選抜など大学入試のための資料としても役立てており、こうした形で大学の選抜に臨む生徒たちが、今年は前年の約1.5倍に増えました。

 研究テーマを自由に選ぶことは、課題発見力の育成にもつながります。成果をまとめるまでの一連の流れは、大学での学びそのものといえるでしょう。

 今は多くの生徒たちが、偏差値や「有名校かどうか」によって大学を選ぶのではなく、「自分のやりたいことができるかどうか」を考えて大学を選ぶようになっています。

 本校では、中高6年一貫の1年生から探究学習の準備をスタートさせ、知的好奇心や興味関心を大切に育てています。



少子化時代の大学選び

―― 少子化時代の大学選びで大学に何が求められるでしょうか。

高松: これからの時代、大学で何を学びたいのかという生徒側のニーズと、大学における教育の中身とのマッチングが、より重視されていくでしょう。その場合、どのような制度が整備されていくのか、見ていく必要があると思っています。

 また、選抜方法が多様化したとはいえ、国公立大学では依然として共通テストの受験が必須とされるなど、探求的な学びを徹底するには厳しい現状があることも否めません。

 そもそも「アドミッションポリシー」「入学選抜の手段」「高校での指導」「生徒のやりたいこと」の4つぐらいはきちんと筋を通していくことが必要だと思います。

 入試選抜の手段において生徒の負担がもう少し軽くなれば、生徒たちがやりたいことをもっと後押しできるのに、と残念に思うこともあります。

 あらかじめセットされたものに自分を合わせていくしかない今の入試システムについても、各方面から知恵を集め改善の余地を探ることができるのではないかと感じています。

―― 本日はお忙しい中、ありがとうございました。<文中敬称略>


戻る


当HP掲載記事の無断転載・転用を禁じます。
©2024 Kyoikujihosha All rights reserved.