いま、世界各国で“市場経済主義”による国民の経済格差問題が噴出しているという。
若者の月収が、生活保護支給額を下回る状態が日本国内で起きているのも、実はその一例に他ならない。
非正規雇用率が労働者全体の35%を超える日本の実情は、韓国の「45%以上」よりマシとはいえ、正常な経済状態ではないだろう。
本書には、1979年から2005年までの26年間、米国における階層別の所得伸び率を調査したデータが紹介されている。
これによると、トップグループ1%では、所得の伸び率が、プラス275%。次の階層19%はプラス65%、中間層に当たる60%はプラス40%だったのに対し、底辺層20%はわずか18%の伸びしかなかったという。
さらに、米国議会予算事務局の2005年度資料では、トップ層20%が占める総所得が、残り80%の人々の総所得を上回り、中でも最上位の所得層がその大半を占めたとされる。
『わたしたちは99%だ』の印象深いタイトルも、わずか1%のトップ所得層が所得の大半をさらっていく現状を訴えたもので、市場原理主義の成り行く果てをうかがわせる。
「学生ローン5万ドルの支払いを続けながら、年収3万ドル程度しか得られず、いつもリストラにおびえて生活する」高学歴のジャーナリスト(オキュパイ・ウェッブ投稿より)など、米国の若者を襲う過酷な労働条件は、日本の若者たちの目にどう映るだろうか。
市場原理主義の“先進国”米国の経済政策は、政治・軍事・経済が密接に絡み込んだものとなっている。
今秋の米国の中間選挙は、オバマ大統領がすすめるセフティーネット社会の推進を維持できるのか、それともさらにひどくなるのか
――。そうした視点で本書を読めば、日本の今後にとっても貴重な情報源となりそうだ。
『OCCUPY! わたしたちは99%だ~ドキュメント・ウォール街を占拠せよ~』
オキュパイ・ガゼッタ編集部編・肥田美代子訳・湯浅誠解説
岩波書店刊・A5判ペーパーバック/2000円(税別)
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