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教育の行政調査を内申に利用
大阪府中学生チャレンジテスト

きょういく時報」17.1.18 761号掲載>




 大阪府教育庁は1月12日、中学生チャレンジテスト(1,2年生)を一斉に実施したが、府内南部の数校では当日体調が悪く受験者が50%程度に終わった学校があったという。大阪府教育庁の話では、昨年12月に実施されたテストに関する説明会でのやり取りで誤解が生じたことが原因だといわれる。

 大阪府ではこうしたチャレンジテストの結果を、高校進学時の内申書に反映させるという。

 かねてより文部科学省は、小学校6年生と中学校3年生を対象とした全国学力テストを実施している。全国的に学力の実態を把握し、教育行政に反映させようというものだが、全国学力テストが始まった当初、大阪府の児童生徒の正答率は全国的に見て芳しくなかった。

 こうした折、橋下徹知事が就任。「教育日本一」の掛け声で選挙戦を戦った橋下氏にとって、その後も低迷を続ける全国学力テストの結果は、相当プライドを傷つけられるものでもあったようだ。が、本来テストの目的は、全国的な学力の実態調査だったはず。

 その後、同じ維新の会の松井一郎幹事長(当時・現日本維新の会代表)が知事に就任。全国ではじめての教育基本条例や、府独自の中学生チャレンジテストの実施など矢継ぎ早に進められた。


学力アップに直結するか?


 一昨年文科省は、全国学力テストの結果を高校進学時の内申書に反映させようとした大阪府の“実力行使”に対し、一時“待った”をかけた。が、実施に向けて後戻り出来ない状態まで事が進み、文科省もしぶしぶ追認した経緯がある。

 代替として浮上したのが大阪府独自の中学生チャレンジテストであり、6月に3年生、1月には1、2年生と、全学年で実施されることとなる。

 教育関係者や一般市民らで構成される「子どもと教育・文化を守る府民会議」によれば、「1年生は3教科、2年生と3年生はそれぞれ5教科で実施されます。1・2年生の場合、現状では個人成績のみに結果が反映されることになっていますが、普段の定期考査なんかもがんばっていて、授業の様子や提出物も良くて、1・2学期に4や5をとれている子でも、受けた一回のチャレンジテストの成果が芳しくなかったら、府教育庁の評定(1~5)に照らし合わせて3に評価されてしまうこともある」との話も聞かれる。

 中3生は、チャレンジテストの結果、自ずと中学校がランク化され、同じ成績の生徒間でも在籍する学校によって高校入試での不公平が生ずるのではないかと心配する声もある。


選抜資料の位置づけ中1から


 全国学力テストも大阪府教育庁の中学生チャレンジテストも、児童・生徒の学力の実態を把握するための行政調査だという。だからこそ文部科学省も、大阪府教育庁が内申書への利用に難色を示したといえる。

 平成30年度大阪府公立高等学校入学者選抜からは、チャレンジテストの全学年の評定が選抜の資料になるらしいが、「大阪方式の現状は、児童生徒たちの競争を煽る教育でしかない」(教育関係者)との意見も多い。

 文部科学省では、子どもの成長の節目で、それぞれ良い部分や習熟した部分をどう評価できるかという見方で、多面的評価の実施を促している。

 教育庁への改組を機に、私学行政を教育庁(教育委員会)へ一体化させた大阪府。“公立学校の私学化”をさらに進める方向性を示している。


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