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公平な教育財源措置を
大阪府・公立中高一貫教育を推進

<「きょういく時報」16.8.8 755号掲載>


 大阪府教育庁私学課による私立高校の無償化制度に関する保護者向け満足度調査アンケート結果が発表された。

 9011人の保護者を対象に行なわれた今回の調査で回答率は28.3%となった。

 「在学されている私立高校を選択されたときの決め手となったもの」について、保護者が選んだ項目を高い順に見ると「公立高校には見られない独自の建学精神がある」が14.7%,「進路指導が充実している」14.6%、「希望する学科やコースがある」12.7%、「クラブ活動が充実している」9.2%、「系列大学に進学でき大学受験の心配がない」8.8%、「校風があっている」8.5%、「施設設備が充実している」8.1%、「基礎学力が身につく教育を行なっている」6.2%、「歴史と伝統がある」5.7%、「生徒指導が充実している」5.4%、「教員の授業力が高い」4.2%、「宗教教育が受けられる」1.2%、「就職指導が充実している」0.7%となった。

 また、私立高校無償化制度に関して「授業料無償化制度により、私立高校の修学にどのような影響があったか」との項目では、年収250万円未満から年収800万円未満の所得帯において、全体のほぼ83%以上の保護者が「制度があったので私立高校に修学することができた」と回答している。

 今年で3回目となる満足度調査だが、私立高校に対する満足度は年々上昇傾向にあるものの、少子高齢化時代をむかえて大阪の私立中高一貫校の経営環境は厳しい状況にあるようだ。


橋下知事時代に打ち切り


 その要因の一つとして、橋下知事時代、私立高校無償化と引き換えに大阪府内の私立中学校への私学助成が打ち切られたことがあげられる。

 「小学校や中学校など義務教育の部分については公立で府民の面倒を見る」といった当時の橋下知事の判断により、私立中学校への保護者の足が遠のいたことは、否めない。こうしたことが、ここ数年の大阪府内における私立中学校の志願者数低迷につながっている側面もあるのではないだろうか。

 今年1月には、松井大阪府知事が、私学行政と公立教育行政を一元化した教育庁をつくるという話を発表し、大阪府の私学関係者を驚かせた。さらに来春、大阪府で初めての中高一貫校、府立富田林中学校高等学校がスタートする。

 高校の英・国・数の中学校での先取り学習や、早朝の英語レッスンなど、内容を聞くとこれまで私立中高一貫校が実践してきた特色を公立校でも反映させようということらしい。中学校の生徒は大阪府内全域から集めるが、同校は「南河内の国際文化拠点のコアをめざす」ことを目標にするとしている。


公平・不公平が見えにくく


 教育庁内部にも公立中高一貫の専門担当部署が設けられるなど、公立の中高一貫校が今後さらに旧9学区の1番手2番手校などにも設けられるのでは、と見る向きもあるようだ。

 中高一貫校をつくる場合、施設設備やカリキュラムや教員配置などかなりの費用がかかるといわれ、今後多額の税金が投入されることになる。

 大阪府内公立高校には「トップ10」といわれる難関進学校があり、大阪府内どこからでも志願できる。地域の拠点となっている公立高校を中高一貫教育でさらに底上げしていこうということなのだろうか。

 公立高校も私立と同様に、上位校合格には受験準備のための塾通いをしなければなかなか難しいのが現実。

 公立の中高一貫教育の必要性を大阪府教育庁が認め、税金を投入するならば、私立の中高一貫校に対しても中学校部分の公的助成を行うのが筋だろう。

 府民であり保護者である人々の間に生じる不公平が益々見えにくくなる中、日私中高連の努力もあり、来年度から政府予算に私立中学校小学校助成が盛り込まれるらしい。(N)


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