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18歳選挙権の実施課題

<「きょういく時報」16.3.28 748号掲載>


 今年予定されている参議院選挙で、18歳の高校三年生から選挙権が行使されていくという。

 こうした中で先日、愛媛県教育委員会が高校生の政治活動に関する指針を打ち出した。指針の内容は、政治活動を高校に届け出る制度と、それに伴う親の承諾が基本になっているようだ。

 文科省では総務省と連携し、政治や選挙に関する副読本『私たちが拓く日本の未来』を作成し、活用のための検討委員会を設置した。

 また兵庫県においては、指導事例集を活用した先生のための実践研究会を5月に開催予定という。各学区で地区別研究会を1回ずつ実施し、教員への生徒指導を周知徹底するとしている。

 だが、懸念される問題もある。第一に、選挙権を持つとされる高校生個人が、政治活動に伴ってプライバシーを侵害されるケースが発生してくる恐れがある。

 第二に、学校の先生や親が子どもに対して、選挙権の侵害になりかねない話をうっかりしてしまうケースが考えられる。

 そもそも諸外国に比べると、日本の中・高生は親に対する従属感が強いといわれる。家族の中で、子どもの“個の確立”が脆弱であればこそ、前述したようなケースが出てくることが予測される。

 公職選挙法では、選挙権侵害に関する罰則が、当然ながら厳しい。親や先生らが高校生に対して選挙に関することを話す際に、どの部分までが“指導”?で、どの部分から選挙権の侵害になるのか、かなりデリケートな問題も生ずるだろう。

 高校2年生と高校3年生とでは、同じ高校生であっても、選挙権の付与によって個人の権利の重みも違ってくるはずだ。

 先ごろ愛媛県教委が打ち出した政治活動に関する「届け出」の指針自体、「個人の思想信条の自由」に違反する恐れはないのだろうか。

 こうした認識を持つこともなく、ただ「選挙へ!」とコトを進めていくならば、現在の公職選挙法自体が有名無実なものになっていく恐れさえ感じる。

 愛媛新聞によれば、県内の教職員OBや保護者の間から、高校生の政治活動に関する事前届出制度の撤回を求める声が相次いでいるとのことらしい。<N>


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